<ベトナム社会主義共和国/南部>
外務省の平成16年度日本NGO支援無償資金協力事業として、ベトナム社会主義共和国南部メコンデルタ地域へ、二度にわたる医療診療隊を派遣し、口唇口蓋裂患者への援助ならびに絨毛癌予防に関するプロジェクトを行った。 
第一次派遣は、平成17年1月20日より同月29日までの10日間、医師の専門家4名をホーチミン市へ派遣し、オドント・マキシロ・フェイシャル・ホスピタル(診療科15科、ベッド数70床、医師数86名)において、口唇口蓋裂患者の無料手術(口唇裂6例、口蓋裂8例の計14例)、自動体外式除細動器の贈与ならびにその使用に関する指導法の説明を講義形式で行った。
自動体外式除細動器とは、各種原因による突然心肺停止に際して、医学的知識が十分でなくても、緊急で救命を行うことのできる器具で、医療従事者以外でも比較的簡単に操作できるという利点から、近年、欧米を中心に急速に普及している。我々はこれまでの医療支援活動の経験から、アジア諸地域での自動体外式除細動器の必要性に着目し、今回ベトナムでの贈与に至った。
第二次派遣は、平成17年4月29日より5月9日までの11日間、医師の専門家10名、看護師の専門家2名を派遣し、主にベンチェ省・グエンディンチュー病院とホーチミン市・ツーヅー病院の二ケ所において、絨毛癌予防に関するプロジェクトを行った。
グエンディンチュー病院は26の診療科を備え、ベッド数650床、医師数130名のベンチェ省最大の総合病院であり、一方ツーヅー病院は年間分娩数45,000件、ベッド数1,000床、医師数140名のベトナム南部最大の産婦人科専門病院である。
今回のプロジェクトは、1. 現地スタッフとの綿密なミーティング、2. 彼等に対する専門的な講義、3. 今回のプロジェクトに際して一般向けに作成した絨毛癌についての小冊子の、人民委員会(地方政府)ならびに各病院(グエンディンチュー、ツーヅーの2大病院と周辺地域の郡病院)への贈呈、の3点に重点をおいてすすめられた。なかでも、平成10年の立案当初から普及に努めてきたベンチェ省における胞状奇胎登録・管理システムが、有効に機能しているかどうかの評価が大きな目的であった。
ベトナムでは病院の機能分化が進んでおり、一次病院として郡病院、二次病院として省病院、三次病院としてツーヅー病院がある。郡病院で発見された胞状奇胎はベンチェ省最大の病院であるグエンデインチュー病院に集められている。同病院では、我々が以前に導入、指導した絨毛性疾患登録・管理システムに基づいて、処置、管理を行っており、症状の改善が見られない場合は、更に上位機関であるツーヅー病院に紹介されることになっている。平成12年以後、グエンディンチュー病院では、合計172名の患者が登録された。従って、我々が指導してきた管理システムは概ね機能していると考えられる。
ツーヅー病院での医療水準は非常に高度であり、絨毛性疾患に関して言えば日本と遜色のないレベルに到達しつつある。従って、郡病院や省病院のレベルで絨毛性疾患の管理システムが機能すれば、もし病状が進んでも、早期にツーヅー病院に転送することにより救命し得る。同時に、我々の絨毛性疾患登録・管理システムの地方での普及、広報活動の重要性を再認識した。
今後は、ベトナム政府を通して、この管理システムをベトナム全土へ拡大していく予定である